ワクチン後遺症におけるセルフケア『各論1』 

吉野 真人先生 

医師

蒲田よしのクリニック院長
ワクチン後遺症研究会 代表

前回コラムで、私は新型コロナワクチン接種後の様々な体調不良(ワクチン後遺症)の要因として、栄養バランスや代謝、抗酸化力などが大きく影響するため、食事などの生活習慣の良し悪しがその改善の度合いを左右するとお話しました。

ワクチン後遺症は「原因不明で治療法もない」などと言われがちですが、必ずしもそうではありません。昨年3月に発足した「ワクチン後遺症研究会」では、数々の実効性のある治療法と並んで、食事など生活習慣改善法の研究と臨床応用、情報発信に取り組んでいます。ワクチン後遺症に限らず、糖尿病などの生活習慣病はもちろん、ウツなどのメンタル不調やガンなどの疾患に於いても、栄養バランスや代謝、抗酸化力などの改善は重要なポイントであり、食事など生活習慣を改善させる事は最も重要な取り組みの一つといえます。

どのような栄養素が重要で、どのような食材や食事法が適切か、逆にどのような栄養素や食材を避けるべきかについては、その疾患の病態や臨床的特徴を検討する事により、自ずと浮かび上がってきます。また個人による体質の違いも考慮する必要があります。

さてワクチン後遺症に於いては、どのような病態と臨床的特徴が存在するのでしょうか。一見して複雑かつ不可解に見えるワクチン後遺症ですが、国内外に於ける研究により、幾つかの病態が絡み合って特有の多彩な症状が波状的に発生している事が分かってきました。

新型コロナワクチンで真っ先に話題となるものに「スパイクタンパク」があります。ワクチンを接種すると、注入されたメッセンジャーRNA(mRNA)がスパイクタンパクを産生しますが、そのスパイクタンパクが血管内で「血栓」を形成しやすい事が知られています。その結果ワクチン接種後の早い時期に、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症など各種の血栓症を発症し、重症例では死亡する方も少なくありません。血栓が発生する部位は脳や心臓だけでなく全身に及び、急速な症状増悪には大なり小なり血栓が関係しています。

従って血栓が形成されやすい状況を改善する、さらには形成された血栓を溶解しやすくするためには、血栓形成を抑制する効果が証明されている栄養素の豊富な食材を積極的に摂取し、また必要に応じてその栄養素の豊富なサプリメントを内服する事が有効です。

血栓を予防する効果のある栄養素は多数ありますが、その代表として魚油であるEPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)が挙げられます。またナットウキナーゼビタミンCビタミンEなども、血栓形成予防の効果があるとされています。

次にスパイクタンパクにより「免疫異常」および「炎症」が発生しやすくなります。脂質ナノ粒子に包まれたmRNAが全身各組織へ運ばれてスパイクタンパクを産生、そのスパイクタンパク単体、またはスパイクタンパクを含むエクソソーム(ほぼすべての細胞から分泌される小胞)を受け取り細胞表面にスパイクタンパクを発現した細胞が、自身の免疫細胞により「異物」と認識されて強い炎症反応を生じ、そのため全身各所に於いて様々な炎症症状が発生します。

炎症所見の発生部位は多岐に及びます。その部位により心筋炎、心膜炎、甲状腺炎、間質性肺炎、自己免疫性肝炎、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、線維筋痛症など実に多数の疾患が挙げられます。そのような多彩な炎症が、時間差で発生する事も知られています。従って免疫異常や炎症を抑制するような栄養素、その栄養素を豊富に含む食材を積極的に摂取したいところです。その代表は前出のEPAおよびDHAで、それに加えてアルファリノレン酸が挙げられます。これらは必須脂肪酸のうち「オメガ3系油脂」と言われているものです。

また、これとは逆説的ですが「自然免疫の低下」もよく見られる病態です。接種で注入されたmRNAが「抗体」を産生しますが、その抗体が皮肉な事に、自然に備わっている免疫力を低下させるのです。そのため帯状疱疹などの各種感染症に罹りやすくなってしまいます。そのため自然免疫力を強化する栄養素、それを豊富に含む食材をしっかり摂取したいものです。その代表格はビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウムです。これらは新型コロナが蔓延し始めた2020年には早くも、コロナを予防する栄養素として注目を集めました。

次にスパイクタンパクによる「酸化ストレス」が問題となります。上述のように各所で炎症が発生し、それにより細胞や組織の障害が起こりますが、その際に多量の「活性酸素」が産生され、これが組織や臓器を酸化させ、様々な症状や合併症の発症をもたらすのです。

活性酸素はワクチン後遺症に限らず、様々な疾患や体調不良の重大な原因となりますが、その発生要因は多岐にわたります。タバコやストレス、各種の添加物、それに薬剤など様々です。従って現代人にとっては、活性酸素を意識的に除去する事が必須となります。活性酸素による酸化ストレスを軽減させる栄養素には様々なものがありますが、その代表はビタミンA、ビタミンC、ビタミンEです。これに各種ポリフェノールやカルテノイド、例えばリコピンやベータカロチン、アントシアニン、アスタキサンチンなどが加わります。

ワクチン後遺症には実に多彩な症状がありますが、そのリストをVol.て一つ気づく事があります。それは「神経症状」がたいへん多い事です。ザっと見渡して半分は神経系統の症状といえます。次回は「神経症状」の改善に必要な栄養素などについて解説します。(ニュースレターVol.21より)

ワクチン後遺症研究会
代表 吉野 真人


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