ワクチン後遺症におけるセルフケア 総論(総論、各論①、各論②、各論③、各論④、各論⑤)

吉野 真人先生 

医師

蒲田よしのクリニック院長
ワクチン後遺症研究会 代表


新型コロナウイルス感染症に対するワクチンを接種した後に、様々な体調不良(ワクチン後遺症)に見舞われる方が増えており、中には日常生活や仕事、学業などに重大な支障を来たすほど深刻な心身の不調が続いている方々も、決して少なくはありません。

体調不良の方々は通常、市中病院や町のクリニックを受診しますが、医師から「ワクチン後遺症など存在しない」と門前払いされ、あるいは各種の検査で異常なく「原因不明で治療法もない」と匙を投げられ、路頭に迷うような事例がたいへん多くなっております。

一方でワクチン後遺症に正面から向き合い、手探りながら治療に挑む医療機関も各地に現われ、少しずつ増えてきています。その多くは小規模な医院ですが、病院で解消しなかった体調不良を何とか治してもらおうと、藁をもつかむ思いで医院の門を叩くのです。

そのような医療機関の医師の多くは、ある種の不安を抱えています。これまで経験した事のないようなワクチン後遺症に関して、学会や医師会などから診断基準や治療ガイドラインも示されていないため、どんな治療法が良いのか、確かな自信が持てないのです。

また日常診療だけでも忙しいのに、ワクチン後遺症患者の受け入れを表明した場合、数少ない診療可能な医院に患者が集中してしまい、通常の診療や業務に支障を来たしてしまうのではないか、などという不安が頭をよぎり、患者受け入れに二の足を踏むのです。

そのような厳しい現状を受け、全国有志医師の会では「ワクチン後遺症研究会」を2022年3月に発足させ、後遺症治療に関する討論と情報共有に取り組んでいます。会員は2023年2月に120名を越え、2週に1回の割合でZoom討論会を開くなど活動しています。

ワクチン後遺症研究会に於ける医師同士の情報共有や討論によって、不明とされたワクチン後遺症の病態が、少しずつ明らかになってきました。一方で治療法に関しても、会員医師どうしで治療経験を共有し、有効な治療法が次々とリストアップされてきました。

そのようにワクチン後遺症に関する情報が研究会内で共有された結果、様々な治療法に果敢に取り組む医師が増え、またその治療経験が医師間で共有される、という好循環が生まれてきました。そのような情報を求めて研究会に入会する医師も徐々に増加傾向です。

確かにワクチン後遺症の治療を行なう事を標榜する医療機関は増えてきていますが、それでも全国で100軒前後と、未だ少ないのが現状です。地域的な偏在も大きく、ワクチン後遺症の治療を行なう医療機関が1軒もない地域は、全国いたる所に残されています。

たとえ近くにワクチン後遺症の治療を行なう医療機関があったとしても、そこで満足のいく治療が受けられない可能性もあります。自分の体調に適合した治療法とは限りませんし、通院するための体力や金銭的な問題で、充分な治療が受けられないかもしれません。

さらに首尾よく自分に合った治療を受けられたとしても、それだけでスムーズに体調が回復するとは限りません。治療が効果を発揮するまでには一定の時間を要しますし、また治療が奏功するかどうかは、その人の生活習慣などの要素に大きく左右されるものです。

これは何もワクチン後遺症に限らない話で、例えば糖尿病などの生活習慣病はもちろん、精神疾患やアレルギー疾患、さらにはガンなどの病気の場合でも、栄養バランスや代謝、解毒力などの状態が、病気や体調不良の改善の優劣に多大な影響を与えるのです。

ワクチン後遺症研究会などでも討論テーマとなっていますが、ワクチン後遺症では栄養バランスや代謝、抗酸化力、解毒力、免疫力、腸内環境などが特に悪化している事が多く、このような体質的な問題が後遺症としての病態に少なからぬ影響をもたらしています。

それらの体質的な問題は、実は食事など日常的な生活習慣の影響を強く受けています。食事などに大きな問題がある場合、栄養バランスや抗酸化力などの要素に重大な支障を来たし、ワクチン後遺症の諸症状が更に悪化する、または改善の阻害要因となるのです。

すなわちワクチン後遺症に関しては、適切な治療を受けるのと並行して、或いは事情があり治療を受けられない場合では尚のこと、食事などの生活習慣を改善し、栄養バランスや代謝、解毒力、免疫力などを改善するため取り組むのは、たいへん重要な事なのです。

それではワクチン後遺症に於いては、どのような栄養素がとりわけ必要で、どのような食事上の注意や工夫が挙げられるのでしょうか。また食事と並ぶ生活習慣、例えば運動や入浴などの日常的な生活行為に関しては、どのような注意や工夫が望ましいのでしょうか。どのような栄養素が重要であり、どういう食事や日常生活が望ましいかは、ワクチン後遺症の症状の特徴や病態を検討することで、自ずと浮かび上がってきます。ワクチンにより産生されるスパイクタンパクの影響で、全身の様々な要素に病的な力が働くのです。

次回以降は、ワクチン後遺症の病態や症状に合わせた栄養素の補給と、具体的な食事方法、生活上の工夫などについて、詳しく解説していきます。(ニュースレターVol.19回より抜粋)

ワクチン後遺症研究会
代表 吉野 真人


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