吉野 真人先生
医師
蒲田よしのクリニック院長
ワクチン後遺症研究会 代表
前回までのコラムでは、新型コロナワクチン接種後の多彩な症状(ワクチン後遺症)の主要病態である血栓傾向、免疫異常と慢性炎症、酸化ストレス、神経障害などを改善させるために重要な栄養素、および豊富に含まれる食材などについて説明しました。
例えば血栓の予防や炎症の制御などに有効なEPA(エイコサペンタエン酸)はイワシなどの青魚、免疫の改善などに必要なビタミンCは新鮮な野菜や果物、神経機能の修復などに重要なビタミンB群は豚肉など肉類一般に、各々豊富に含まれています。それと並んで、食材の選び方のポイントと注意すべき食品などについても概要を説明しました。すなわち加工度の高い食品は最小限にして、自然に近い形のオーガニックな食材を選び、良質な油を使い、小麦製品などは控え目にする、などです。
さて、そのような「健康に良い」食材を入手したとして、毎日どのように調理して摂取すれば良いのでしょうか。いくら良質な食材を手に入れても、バランスを欠いた食材の選択や不適切な調理法を用いたのでは、せっかくの食材が無駄になってしまいます。
毎日の献立を考える時にポイントの一つとなるのが「主食」と「副食」です。主食とはご飯やパン、麺類などを指します。これら主食の原料は米や小麦粉、ソバなどですが、栄養学的には炭水化物という糖質の一形態であり、主たるカロリー源の一つです。
一方の副食は「おかず」などと総称され、肉や魚、野菜などを駆使して様々なものが含まれます。これに味噌汁やスープなどの「汁物」が加わります。これらを合わせ、昔からよく「一汁三菜」などと表現される、定型的な食事の献立が考案されてきました。
例えば定型的な「和食」の一汁三菜は、ご飯に味噌汁、おかず3品から構成されます。ご飯は多くの場合「白米」を使用し、味噌汁には野菜や海藻、豆腐などの「具」が入り、おかず3品では焼魚、魚と野菜の煮物、葉物野菜のお浸し、漬け物などのお皿が並びます。
一方「洋食」では、主食に相当するのは多くの場合パンであり、汁物としてコンソメなどのスープが出されます。副菜に相当するものとして、メインディッシュやオードブル、サイドディッシュなどと表現される、肉や魚、野菜などを駆使した様々な料理が並びます。
さてそのような献立の中で、ワクチン後遺症からの回復や予防を含む、健康増進のために有効な工夫を考えてみたいと思います。まず主食に関してですが、これは有力なカロリー源ではあるものの、基本的に糖質主体であるため、摂り過ぎには注意が必要です。麺類の多くやパンは小麦製品であり、含有するグルテンタンパクに対する遅発型アレルギーには気をつける必要があります。欧米を中心に「グルテンフリー」、つまり小麦を使わない食品の普及が進んでおり、小麦製品の摂取は控え目にした方が無難です。
そうなると主食は「ご飯」にする方が理にかなっていますが、それでも過剰な摂取は要注意です。確かに小麦のような遅発型アレルギーの心配は殆んどありませんが、やはり糖質が主体であるため、摂り過ぎによる血糖上昇や肥満を招く懸念があります。
ご飯は多くの場合「白米」を使用しますが、白米は玄米を精白する過程で糠や胚芽を除去するため、ビタミンB群などの栄養素や食物線維の大半が失われてしまっています。そのためビタミンB群欠乏など栄養バランスの乱れを招きやすくなります。
従って「玄米」の方が、より健康的といえます。玄米は白米と違ってビタミンB群などの栄養素も豊富です。ただし玄米は独特のヌカ臭さがあり火が通りにくいため、炊き方に工夫が必要です。玄米はヘルシーだけど食べにくい、という方は少なくありません。
そこで玄米を部分的に精白した「5分づき米」や「胚芽米」を食べるのも一つの方法です。玄米よりは食べやすく、栄養的に白米より良好です。最近ではヌカの外側を精白して内側を残し、ビタミンB群などの栄養素の大半を保持した「金芽米」も出回っています。
麺類が好みという人は、どうすれば良いのでしょうか。うどんやラーメン、パスタなどの小麦製品はグルテンアレルギーの心配がある一方で、「蕎麦」は比較的安全です。特に蕎麦粉の割合が多い「十割そば」や「八割そば」などは、比較的お勧めできる麺類です。
最近ではパンや麺であっても、「グルテンフリー」の商品も出始めています。これらは小麦の使用を控え、代わりに米粉や大豆粉などを使っています。そのためグルテンアレルギーを回避し糖質の摂取量を抑えた、新タイプの健康的な食品といえそうです。
次に各種の副食(おかず)を調理する際の工夫と注意点について説明します。料理法には大別して「生(非加熱)」「煮る」「焼く」「炒める」「蒸す」「揚げる」などの調理法があります。例えば魚の場合は「刺身」「焼魚」「煮魚」「蒸し物」「天ぷら」等の料理名となります。
食材によって料理法の向き不向きがあり、例えば魚は新鮮であれば生(刺身)でも摂取可能ですが、豚などの肉類は生では食べられません。野菜でもキャベツは生(サラダ)で摂取可能ですが、ホウレンソウは一部の例外を除き加熱するのが一般的です。
従って加熱せずに食べられるキャベツや新鮮な魚は生で食べる事も選択肢に入れ、生では食べられないホウレンソウや肉などは、できるだけ健康的な加熱調理法を用いる、という工夫が大切です。要は「生」と「各種の加熱」を組み合わせて調理する訳です。
「生」で摂取する料理を紹介すると、和食では生の魚介類とワカメ等の海藻、大根の千切り、各種の薬味を組み合わせた「お造り(刺身)」、洋食では生魚と生野菜を皿に盛り、オリーブオイルをたっぷりとかけた「カルパッチョ」などが挙げられます。一方で「加熱」する料理法には様々ありますが、最も注意したいのは「揚げ物」です。植物油を高温で熱して食材を揚げる調理法では、加熱した油が「過酸化脂質」に変化し、常用すると体組織の酸化が促進されやすくなりますので、控え目にするのが無難です。
次いで「焼き物」にも工夫が必要です。肉や魚などの食材を焼くと香ばしいものですが、焼き過ぎるとアミノ酸や糖質がメイラード反応により「コゲ」となり、アクリルアミド等の有害物質が発生しやすくなります。できるだけ低温で控え目に焼く工夫も必要です。
「炒め物」は揚げ物に比べて安全といえますが、使用する「油」の選択は重要です。一般的なサラダ油は大豆油やコーン油などの混合物ですが、オメガ6系油脂が主体であり、過剰な使用は控えるべきです。エキストラバージンオリーブオイルが最もお勧めです。
ちなみに健康的とされるオメガ3系油脂の亜麻仁油やシソ油(エゴマ油)は、加熱に弱く炒め物には不向きです。これらは「生」でサラダやカルパッチョなどに使用します。そして炒め物にはエキストラバージンオリーブオイルを、という具合に使い分けましょう。
一方「煮物」は油をあまり使わず、コゲの心配もありません。煮物での注意点は「塩分」と「砂糖」の過剰です。煮物は塩や醤油、砂糖で味付けしますが、煮汁が濃縮するにつれて味が濃くなってしまいがちです。ダシを利かせて塩分や砂糖は控え目にしましょう。
比較的問題が少ないのが「蒸し物」です。蒸し物では砂糖を使わずコゲもつかず、余分な油脂を落としてくれます。こうしてみると「生」と「蒸し物」の優先度が高く、次いで「煮物」「炒め物」「焼き物」と続き、「揚げ物」は残念ながら優先度が低いと言わざるを得ません。
次に「デザート」についても言及します。お菓子などデザートの多くは砂糖や小麦粉を多用し糖質過剰のため、あまりお勧めできませんが、最近ではこれらの使用を抑え、大豆粉などで代用したお菓子も出回っています。甘さは控え目ですが、旨さは充分です。
最後に「飲み物」に関してもお話します。砂糖入りの甘い飲料は、実は血糖値の急激な乱高下を誘発し、パニック発作や自律神経失調症状などの引き金となるので要注意です。砂糖なしのコーヒーや紅茶、緑茶、ハーブティー、それに「水」が何よりもお勧めです。(ニュースレターVol.30より)
ワクチン後遺症研究会
代表 吉野 真人
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