マスクの使用を何らかの形で積極的に介入した群とコントロールとを比較した無作為化対照試験および観察研究を対象としたメタアナリシスとシステマティックレビュー

結果:2020年5月20日以前の5471編の論文をスクリーニングし、37研究(40文献)を本研究の対象とし、そのうち11編をメタ分析した。マスク着用アドヒアランス(マスク遵守率)については、フェイスマスク群では対照群と比較して47%(95%CI 25%~68%、p<0.0001)多くの人がフェイスマスクを着用し、アドヒアランスはN95/P2群よりもサージカル/メディカルマスク群で有意に高かった(26%、95%CI 8%~46%, p<0.01)。不快感や刺激に関するアウトカムについて報告した研究が最も多く(20件)、マスクの誤用に関する報告は最も少なく、マスクの汚染やリスク補償行動に関する報告はなかった。バイアスのリスクは、参加者や担当者の盲検化については概ね高く、症例減少バイアスや報告のバイアスについては低かった。

結論:フェイスマスクの受容性、密着性、有効性を低下させる可能性のあるすべての副作用を定量化するにはデータが不十分である。マスクに関する新たな研究では、有害性とマイナス面を評価し報告する必要がある。また、マスク装着のマイナス面を軽減する方法とデザイン、特に可能な代替品の評価についても早急な研究が必要である。

本文よりいくつか抜粋

フェイスマスク群では手洗い行動も有意に(47%)多かった

マスクによる不快さについて検討した4論文では、いずれの論文においても息苦しさを10%以上が訴え,その訴えはマスク使用時間が長いほど増した。その他、ニキビ,顔のかゆみ、赤み、頭痛などについて報告があった。

トレッドミル上の20人の被験者の研究では、サージカルマスクは、1.6呼吸/分(p=0.02)、9.5拍/分(p<0.001)および2.2mmHg(p<0.001)の経皮CO2レベルの呼吸数を増加させた

9 件の研究で、マスク着用時のコミュニケーションの困難さが報告された。

*本研究で言うところの緩和策、とは有害作用を抑制するための緩和策ではなく、マスク着用遵守率を上げる為の緩和策のようである。

*本論文では1日8時間以上にも及ぶような長時間の使用についての研究はない。

考えられる緩和策

状況の制限:フェイスマスクの使用は、公共の交通機関など物理的に距離を置くことができない、混雑した屋内空間などのリスクの高い状況に制限されるべきである。この勧告は、公共の場での最適なフェイスマスクの使用により、感染を大幅に減らすことができると報告したChuらの提案と一致する。逆に、屋外での運動はリスクが低いが、呼吸困難が増加するため、マスク着用のマイナス面も大きい。

マスク着用時間の制限:着用時間は不快感と非着用率を高める。休憩時間にマスクを外すか、マスク休憩を計画的に行うことで、装着時間を短縮することができる。マスクの交換頻度を上げることは、アドヒアランスと汚染リスクの改善に役立つが、コストと廃棄物処理に関する環境問題が増加し、また適切に行わなければ汚染/感染リスクの可能性がある。

特定のグループに対する修正:小児、精神疾患を持つ一部の患者、認知障害、喘息や慢性気道疾患などの呼吸器疾患を持つ患者、顔面外傷や口腔外科手術を最近受けた患者など、マスク着用や正しい使用方法がより困難となるグループがある。

代替品:フェイスシールドは、マスクの代替品となり、いくつかのマイナス面(例えば、コミュニケーション障害や呼吸抵抗の軽減)を軽減し、目の保護も提供することができる。しかし、フェイスシールドを着用した場合の不快感や、空気中の粒子が上方や下方の噴射口から漏れ出す可能性があるため、もたらされる保護の程度については、ほとんど証拠がない。現在開発中の他の革新的なマスクデザインでは、液滴の透過性に加えて、不快感や密着性の評価も必要である。現状では、マスクの受容性、密着性、有効性を低下させる可能性のあるすべての悪影響を定量化するデータが不十分であるため、既存の研究では明確な結論は得られていない。マスクに関する新たな研究では、行動上の問題(すなわち、リスク補償行動)やマスク着用義務化による心理的影響など、有害性とマイナス面を評価し、報告する必要がある。マスク着用による不利益を軽減するための方法とデザインに関する質の高い研究、特に可能性のある代替品の評価に優先的に資金を提供することが急務である。

 Bakhit M, Krzyzaniak N, Scott AM, Clark J, Glasziou P, Mar CD. Downsides of face masks and possible mitigation strategies: a systematic review and meta-analysis. Bmj Open. 2021;11(2):e044364