全国有志医師の会ニュースレター バックナンバー Vol.53(1月30日臨時配信号)

全国有志医師の会より
本日は臨時配信号!53回目のメルマガ発信です。

こんばんは。
今回はメルマガ会員様から「新型コロナワクチン」の接種による健康被害に伴う労働災害認定についてご寄稿いただきましたのでご紹介いたします。

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【メルマガ会員の声】
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新型コロナワクチン接種による健康被害~労災へ請求を~

私はNPO法人神奈川労災職業病センター職員の鈴木江郎と申します。
その名のとおり、業務による労災(労働災害)や疾病(職業病)の労災支援に取り組んでいます。アスベスト疾患や、パワハラ等による精神疾患、過労死、コロナ感染等、仕事が原因であれば労災認定となりますが、因果関係の証明などは困難なので、被災者の支援をしています。

この度、新型コロナワクチン接種による健康被害によって労災認定された件数が判明しましたので、文書にまとめさせて頂きました。ほとんど知られていない情報であり、多くの埋もれた被害者に知って欲しい内容であり、実際にワクチン接種の被害者に向き合われている全国有志医師の会への寄稿を考えた次第です。

◆労災認定数が判明 
全国労働安全衛生センターが実施した厚生労働省交渉(2024年1月23日)にて、『新型コロナワクチン接種による健康被害で労災請求した件数、業務上外の決定件数、傷病名、概要を明らかにすること。集計していないのであれば、集計すること』という要望に対して、厚生労働省は『新型コロナワクチン接種による健康被害で労災請求されたもののうち、業務上となった件数について集計しており、令和3年度は858件、令和4年度は144件となっています』と回答した。

令和4年度 業務上疾病の労災補償状況調査結果(P.3「総括表」)https://www.mhlw.go.jp/content/11400000/001191306.pdf 

確か昨年も同様の要望を行ったものの厚労省は『集計していません』の回答だったので、まずは厚労省として集計の必要性を認識し、実施した事について前向きに評価したい。

そこで本回答を踏まえて追加で何点か再質問を行い、そして再回答を得たので、以下に紹介していく。

◆厚生労働省の回答
まず集計手法について、全国各地の労働基準監督署で新型コロナワクチン接種による健康被害で労災業務上決定した件数を集計し、それを都道府県の労働局が集約し、それを厚労省が取りまとめて集計した。一方で、この集計は業務上決定の件数だけなので、業務外決定、遺族補償決定、障害補償決定についての集計はしていない。

また今回の件数には注射針による針刺し事故等の単純な災害は含まれず、新型コロナワクチン接種によるいわゆる「副反応」で労災業務上決定された件数であることも明確になった。しかしより重要なのは「副反応」の内容であり、それを確認するため疾病名や疾病の程度について情報収集する事であるが、これについては「把握していない」という回答であった。

いずれにせよ今回の回答では、業務上決定件数だけしか分からないので、それ以外の疾病名等の要望事項については引き続き追及していきたい。

◆新型コロナワクチン接種による労災認定の考え方
そもそも新型コロナワクチン接種によって健康被害が発生した場合の労災認定の考え方について厚労省は以下のとおり説明している。

質問:『労働者が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けたことで健康被害が生じた場合、労災保険給付の対象となりますか。』
回答:『ワクチン接種については、通常、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められず、これを受けることによって健康被害が生じたとしても、労災保険給付の対象とはなりません。一方、医療従事者等に係るワクチン接種については、業務の特性として、新型コロナウイルスへのばく露の機会が極めて多く、医療従事者等の感染、発症及び重症化リスクの軽減は、医療提供体制の確保のために必要です。したがって、医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のた
めに必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。なお、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても、同様の取扱いとなります。』

・参考資料:新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#

また公務員の場合も同様に公務遂行性を認めるとしている。
新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種で医療従事者等に健康被害を生じた場合の取扱いについて(地方公務員災害補償基金)
https://www.chikousai.go.jp/corporate/pdf/info/r3/info030423.pdf

◆医療従事者等と高齢者施設等の従事者のワクチン接種は業務行為
以下は「回答」の要約です。
ワクチン接種は「労働者の自由意思」なので、通常は業務ではないから、労災としては認められない。しかし医療従事者等(および高齢者施設等の従事者)のワクチン接種については、新型コロナウイルスばく露の機会が極めて多く、感染、発症及び重症化リスクの軽減は、医療提供体制の確保のために必要であるので業務行為と言える、よって労災保険の対象となるという考え方である。

したがって接種後に発症した疾病(または死亡)につき、接種との因果関係が認められれば労災認定する事になる。特に疾病を限定している訳ではないので、どんな病気であれ、ワクチン接種との因果関係が認められれば労災認定される。

一方、上記の考え方は、医療従事者等や高齢者施設等の従事者ではない、一般の労働者の場合は「労働者の自由意志」なので業務遂行性はないから労災の対象外とされてしまい、大いに問題がある。

新型コロナワクチンは国をあげて接種が推奨され、職域接種という方法まで採られ、労働者が多い事業所や対人業務が中心の業種や職種などは、特に接種が半ば強制されていたのが実態であり、これを「労働者の自由意志」だから労災の対象外だと切り捨てる訳にはいかないだろう。

◆「予防接種健康被害救済制度」について 
また労災保険制度とは別に「予防接種健康被害救済制度」という制度がある。この制度の趣旨は『予防接種の副反応による健康被害は、極めて稀ですが、不可避的に生ずるものですので、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種と健康被害との因果関係が認定された方を迅速に救済するものです。』

・参考資料「予防接種健康被害救済制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkouhigaikyuusai.html
 
新型コロナワクチン接種により健康被害が生じた方はこの制度の対象であり、厚生労働省も定期的に「認定審査会」を開催しており、更に「審議結果」につき概要(性別、接種時年齢、ワクチン、請求内容、疾病名・障害名、関連する基礎疾患及び既往歴、判定、否認理由、備考)をWEBサイトで公開している。
 
この記事を書いている直近2024年1月19日の「審議結果」をみると、これまでの実績(累積)では、進達受理件数10,016件のうち認定件数5,891件、否認件数1,002件、保留件数64件(従って差し引き3,059件が未審査件数)、死亡事案に係る件数は進達受理件数1,145件のうち認定件数423件、否認件数77件、保留件数2件(従って差し引き643件が未審査件数)となっている。

◆多様で重篤な疾病が認定されている
 そして2024年1月19日分のみの「審議結果」では、審議件数51件、認定27件、否認21件、保留3件となっており、認定27件の接種時年齢を集計すると、30代2件、40代5件、50代5件4人、60代2件、70代8件7人、80代5件4人であり、30代~50代を合計すると12件11人もいる(認定27件24人中の約46%)。

【12件11人の疾病名・障害名】
・59歳:好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
・33歳:潰瘍性大腸炎
・48歳:血便、潰瘍性大腸炎
・59歳:完全房室ブロック
・41歳:心室細動
・46歳:血圧上昇、傾眠傾向、咳嗽、目の充血、ふらつき、めまい、嘔気、
・41歳:腸間膜脂肪織炎
・43歳:頭痛
・50歳:多発性硬化症、MOG関連疾患の増悪
・33歳:脊髄炎、薬剤性肝炎
・55歳:脳幹出血および死亡

この12件11人の疾病名・障害名を見てみると、死亡はもとより、疾病も多岐にわたり、重篤な疾病が多いことが見てとれる。

◆働く世代の労災未請求事案が相当数交じっているのでは? 
さて、なぜ「予防接種健康被害救済制度」を持ち出したのかと言うと、「予防接種健康被害救済制度」で新型コロナワクチン接種との因果関係が認められたとしても、その医療手当が僅かな額しか給付されないからである。

予防接種健康被害救済制度の医療手当は、療養日数によって多少の差があるが、最大でも月額37,800円しか支給されない。別途社会保険に加入していれば、最大1年6ヶ月は傷病手当金が支給されるが、その日数を超えると支給が止まるので、医療手当の月額37,800円だけでは生活はたちまち困窮してしまう。

そして上記の「審議結果」のとおり、働く世代の認定件数は少なくない。筆者は、認定実績(累積)5,891件や死亡認定423件のうち、働く世代の労災未請求事案が相当数交じっていると考えている。少なくともワクチン接種を業務とみなす医療従事者等や高齢者施設等の従事者で「予防接種健康被害救済制度」の認定を受けた方は、労災請求を行い、労災保険からより手厚い補償を受けるべきである。

「予防接種健康被害救済制度」で認められたのであれば、労災保険でも労災認定される可能性が相当高い。

また争いとなる可能性があるが、医療従事者等や高齢者施設等の従事者以外の方で「予防接種健康被害救済制度」の認定を受けた方も積極的に労災請求を行って欲しい。業種や職種に関わらず、ワクチンは業務の必要性から接種せざるを得なかったと言えるからである。

◆まだまだ氷山の一角 
そもそも予防接種健康被害救済制度の認定数5,891件や労災認定数1,002件(2021年度858件と2022年度144件)は氷山の一角で、請求に至らない埋もれた被災者がまだまだ相当数いると考えられる。また今後も新型コロナワクチンに限らず、ワクチン接種をせざるを得ない状況に置かれる事は十分に予想できる。

そこで社会として最低限必要な事は、ワクチン接種で被害を受けてしまった場合でも、被害者を切り捨てることなく、十分な補償を受けられるように制度設計し運用する事である。この問題は引き続き注視していきたい。

NPO法人神奈川労災職業病センター
職員 鈴木 江郎

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※医療従事者や介護職でなくても、「職場から強制された」という証拠があれば労災認定される可能性がありますので、職場からのメールや通達文書等の証拠の保存及び保険治療にかかった明細書のコピー等、申請に関わる資料はコピーをとっておくことが必要です。
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